最終的な入場者数は17万7779人になった

この年の有馬記念当日、中山競馬場は入場制限をしていない。午後3時には17万人を超えたと発表されたが、それからもまだ客はやってきていた。JRA保安企画課の職員はその対応にてんてこ舞いだった。

すでに収容人数をかるく超え、警察からは「もう入れるな」と指導されていた。それでも、客はどんどんやってきて、「開けろ! 開けろ!」と騒いでいる。競馬場にはいったところで、この大混雑のなかでは、パドックはもちろん、レースも見られないし馬券も買えない。

『オグリキャップ 日本でいちばん愛された馬』(著:江面弘也/講談社)

最終的な入場者数は17万7779人になった。空前絶後の数字である。

中継するフジテレビはオグリキャップの引退レースということで特番態勢をとっていた。これには解説者の大川慶次郎や井崎脩五郎から異論もあった。

「引退レースなのはわかるんだけど、勝てそうもないのに、どうするの。負けたらしんとしちゃわないかな」

実況する大川和彦はスポーツアナウンサーでは一番のベテランだった。有馬記念を含めて8度オグリキャップのレースを実況している大川は言う。

「競馬担当のディレクターはオグリキャップファンで、思い入れがあった。大川慶次郎さんや井崎さんのように前から競馬をやっている人は、天皇賞、ジャパンカップと惨敗したのを見て、いくらなんでも勝てないだろうと。勝てない確率が高いというのが冷静な人の見方でした」

大川自身も「たぶんオグリキャップの馬券は買っていなかった」と言った。