認知症の進行につながる、老齢期の孤独

【朝田】:おっしゃることは、実は深刻な問題なんです。

老齢期の孤独は、うつなどの精神的な不調の引き金となり、認知症の進行にダイレクトにつながってしまいます。

だから、高齢者だけでなく、誰もが孤独にならないよう2018年にイギリスで「孤独担当大臣」ができました。あまり知られていないけど、実は2021年に日本でも同じようなものができたくらい大切なことなんです。

【山本】:やはりそうなんですね。若いときに世の中に順応しきれず、逃げ出して孤独になるのとは、また違うんですね。

【朝田】:自分から逃げちゃうのと、時期がきたからといっていきなり「はぎ取られてしまう」のとでは、まったくの別物です。

どちらも心の準備をする時間があるようでいて、実は覚悟もできていない。その点は似ているかもしれませんが。

【山本】:そうですね。だから僕は、友達によく聞くんですよ。「君、今日奥さんと話した? 子どもと話した?」と。

そうすると、「話が合わないよ」とか、「話はしてるけど、すぐに反論したくなる」、って言うんです。

奥さんが、「今日は友達とこんな話をしてね」と言っても、そんなくだらん話をしていて何が楽しいんだってそう思うだけじゃなくて、実際に言ってしまうらしい。

実に無神経なことです。相手への思いやりが持てなくなったら、孤独というやつがすぐに擦り寄ってくるんですから。

相手の立場になって話を聞くことができない年寄りに、友達はできません。