引退したら、家族との人間関係を老後に向けて再構築
【朝田】:おっしゃるとおりです。
仕事を引退したら、まず一番近くにいる家族との人間関係を老後に向けて再構築し、工夫していくことが大切なんですね。
それまで不在だった時間を家で過ごすようになると、今まではなかった会話や作業を家族と分かち合うことになります。ここで関係を探るのが一番の基本なんですが、「面倒くさい」「照れくさい」と言い訳して、つい今までどおりやり過ごそうとする。
そして、本来なら最も安心できるはずの家庭の中で、かえって孤立してしまう。
【山本】:自分が孤独感に苛まれているのだったら、自分でその孤独を解消するための工夫をしなくちゃいけないんですよ。
努力も大切ですが、工夫がないと、仕事でも新しい局面に対応できないでしょう?老後はそういうものと覚悟することです。
※本稿は『老いを生ききる 軽度認知障害になった僕がいま考えていること』(アスコム)の一部を再編集したものです。
『老いを生ききる 軽度認知障害になった僕がいま考えていること』(著:山本學・朝田隆/アスコム)
白内障、緑内障、2度のがん、そして軽度認知障害(MCI)。
88歳、俳優・山本學が、軽度認知障害と診断され、体も心も少しずつ衰えていく現実のなかで、それでも「今日を生ききる」その思いを収めています。
一人暮らしを続けながら、食事のこと、病気のこと、トイレのこと、物忘れとの付き合い方、そして終活について、日常の小さな困りごとをひとつひとつ受け止め「もう最期まで付き合おう!」と飄々と語る、その心の内にあるものは?
本書は、山本學さんが、認知症専門医・朝田隆医師と重ねた対話によって生まれた一冊です。
医師としてのまなざしと、俳優としての観察眼が交わるとき、「老いを生ききる」とはどういうことかが浮かび上がってきます。





