俳優・山本學さん(写真提供:アスコム)

3年前に軽度認知障害(MCI)と診断され、Uターンに向けて努力を続ける俳優・山本學さん。2度のがんを経験し、少しずつできないことが増えていく中、「それでも【今日を生ききる】」という思いを胸に一人暮らしを続けています。そこで山本さんが認知症専門医・朝田隆医師との対談をまとめた『老いを生ききる 軽度認知障害になった僕がいま考えていること』より、一部を抜粋して紹介します。

裏側にある物語に目を向けあえて「普通」に見えるものを選ぶ 山本 學流「カッコいい」の流儀

【朝田】:他人の視線を意識するというのは、案外大事だったりします。

いくつになっても「カッコいい」と言われると気分がいいですし、服装ひとつとっても、他人が見てどう思うだろうかとワンクッション置くことで、自分を客観視できますからね。

その点、役者さんというのは、格好よさの典型例のように私などは思うのですが、いかがですか?

【山本】:僕なんかは背丈もないし、恰幅がいいわけでもない、みてくれはいわゆる凡人なんです。

たとえば、田宮二郎さん、石原裕次郎さんなんていう人は、背丈も大きく二枚目で。

そんな役者を見てたいていの人は格好いいと言うんだけど、僕はもともと格好よさがないのに役者になっちゃったから、ごく平凡な俳優として生きていくしかないと思ってね。

【朝田】:もとは舞台の装置、大道具なんかをやりたかったとおっしゃってましたね。

【山本】:中学・高校は生物部と歴史研究部で、サッカーもやっていました。中学生の頃は歴史の先生になれればいいと思っていて、役者は考えてもいませんでしたね。