術後の食事日記からヒントを得た
まず一番に始めたのは、腸内環境を改善する材料選びです。そこで頭に浮かんだのが食物繊維。ただし、胃腸に優しくて、お菓子の材料に最適なものでなければなりません。ヒントを求め、大腸がんの手術後につけていた食事日記を読み返したところ、「卯の花」という文字が頻繁に出てきたのです。当時、おからを軟らかく煮て食べたあとは調子がよかったことを思い出しました。そうだ、おからを使おう! と閃いたのです。
おからは食物繊維が豊富なだけでなく、元が大豆ですから、たんぱく質、カルシウム、カリウムなども多く含まれ、栄養価がとても高い。おやつとしてだけでなく朝食にも食べられる「マフィン」を作ろう、と方針が固まっていきました。
マフィンは、季節のフルーツやナッツのほか、にんじん、トマトといった野菜を加えるなどアレンジが無限に広がるのが魅力。おから以外の食材を加えることで栄養価も高くなりますし、色味がついて見た目も華やかになります。
ちなみに成人女性が1日に摂取すべき食物繊維の目標量は18g以上ですが、日本人は平均6gほど足りていません。マフィン1個で不足分を補えば、手軽にお腹の調子も整えられて一石二鳥です。
生地のメイン材料はおから。砂糖はできるだけ少なく。病気の人や小さなお子さんにも好まれるふわふわの食感になるように材料の配合を変えて試作を繰り返しました。「おいしい」と「体にいい」、どちらかに偏りすぎないようなバランスを模索して、ようやく私の舌と心が合格点を出せるものが完成。基本の生地にドライフルーツやかぼちゃの種、にんじんのすりおろしなどを加えた、見た目も栄養価もリッチな自信作を「おからパーフェクトマフィン」と名づけました。
インターネットショップの看板メニューとして販売を始めると好評をいただき、小さな店舗でも提供するように。その後、マフィン作りの教室も開きました。
教室には、お腹が弱い、体質的に乳製品がNGであるといった悩みを抱える人だけでなく、がんを患う家族にスイーツを食べさせたい、腸から健康になりたいと願う人など、さまざまな目的をもった生徒さんがいらっしゃいます。私自身もそうでしたが、これを食べ始めてから便秘が解消されたという声がたくさん届きました。また、栄養バランスがいいので、出張のとき持参するなど、外出時の栄養補給食にしている人も多いようです。