重野さんの「おからマフィン」(撮影:川上尚見)
お腹の不調が原因で、大好きな甘いお菓子を我慢するのは悲しすぎる──。そんな思いから、おいしくて腸に優しいスイーツを開発した重野佐和子さんにお話を聞きました(構成=村瀬素子 撮影=川上尚見 イラスト=青山京子)

おかゆ一口で胃腸が動き出した

大好きなスイーツを口に運ぶと、思わず顔がほころんで幸せな気持ちになりますよね。疲れやストレスもたちまち吹き飛ぶ。でも、食べたくても我慢せざるをえない人もいます。病気のため食事を制限している人、発病や再発を恐れている人、お腹が弱い人……。

それがどんなにつらいことか、私も大腸がんになって知りました。そういう人たちに、そして健康な人にも、とびきりおいしくて体に優しいスイーツをお届けしたい! そう思って、私は「おからマフィン」を開発したのです。

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私の直腸にがんが見つかったのは、38歳の時。「おいしいものを食べすぎたからだ」と直感的に思いました。フランス料理とスイーツを専門とする料理研究家として、土日も関係なく夜遅くまでキッチンで働き、肉やバター、生クリームなどこってりしたものを日々口にしていたのです。しかも、仕事を終えた深夜に食べることもしょっちゅう。

当時から食事と体に関する知識は多少ありましたので、自分の胃腸に負担がかかっているのはわかりました。それに、よく下痢をしましたし、寝ても疲労感が抜けないという自覚があった。若かったから気合で乗り切っていたけれど、私の腸は悲鳴をあげていたのです。

最終的には下血してしまい、病院で検査を受けたところがんが発覚。自分の体へのいたわりが足りなかったと、反省しきりでした。

ただ、手術に関しては、悪いものを取り去るのだからきっと以前より体がラクになる、と前向きに捉えていましたね。当時は開腹手術が一般的だったので、術後しばらくは点滴で栄養を補給するのですが、その後、何日ぶりかの食事で口にしたおかゆのおいしさは忘れられません。お腹がぎゅるぎゅると音を立てて動き始め、体の中から元気が出てきたのです。食べ物の持つ力を体で感じ、感動を覚えました。

おかゆを食べ始めてからお腹の調子も順調に回復し、1週間後に退院できることに。「消化のいいものを、よく噛んでゆっくり食べる」などの注意事項はあったものの、基本的には何を食べてもいいでしょう、とお医者さんに言われて。患者って自分に都合のいいことしか耳に入らないので(笑)、病院からの帰り道、早速大好きなサンドイッチを買い込みました。

ところが食べ始めた直後にお腹の激痛に襲われて、ベッドに直行。そんな失敗もあり、私は改めて食べ物と体の関係について真剣に考えるようになったのです。