(写真:stock.adobe.com)

 

きょうだいについても、適度な距離感が必要だと考えています。私と妹は、車で十数分というところで、お互いにひとり暮らしをしていました。「そんなに近いのだし、ふたりで住んだほうがお互いに心強いでしょうから、一緒に住んだほうがいいでしょう」と、周囲の人たちによく言われたものです。

しかし、どんなに勧められても、私も妹もそういう気にはなれませんでした。私たち姉妹は、決して仲が悪かったわけではありません。けれども、ライフスタイルが違っていたのです。妹は音楽を教えており、自宅でいつも大勢のお弟子さんに囲まれ、音楽とおしゃべりを楽しんでいました。他方私は、原稿を書く仕事をしており、ひとりでじっくり考えごとのできる環境が必要なのです。

ふたりが一緒に住めば、うまくいかないことは明白で、私たちには、それがはっきりと自覚できていたのです。

お互いに仕事を持ちそれぞれの生活を送りながら、時間が合うと連絡をとって、一緒に食事をしたり出かけたりする。歳をとり、夫を亡くした私にとって、近くに妹がいてくれることはとても心強く、妹にとってもそれは同様でした。

ひとつ屋根の下で一緒に暮らさないことで、私たち姉妹は居心地のよい距離感を保ちつつ、支え合っていたのだと思います。

高齢者の暮らしは、それぞれの好む暮らし方を尊重した上で、孤独にならないよう、周りとほどよい関係を築いていきたいものです。

 

【関連記事】
孫が綴る佐藤愛子さん101歳の姿「祖母の最後の願いを叶えてあげられなかったと嘆く母。活火山のような祖母と母一人子一人で生きてきて」【漫画】
【101歳。ひとり暮らしの心得】人間いつ何があるか分からないのは、家族がいても同じ。未来におびえながら暮らすより、今を精いっぱい楽しむ方がいい
影絵界のパイオニア・藤城清治101歳「絵を描きだすと年齢を忘れちゃう。この間も、時間も忘れて夢中になって、気が付いたら朝でした」
吉沢久子さんの連載「101歳。ひとり暮らしの心得」一覧はこちら