最終回に込めた思い

最終回の前半は、かたき討ちという“祭り”が終わって日常に戻る、という様子を描きました。本居宣長や曲亭馬琴とのやりとりとか、蔦重が置き去りにしていたものを完結させていただきました。

(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)

それから蔦重の臨終ですね。

そもそも臨終の様子は、蔦重の墓碑へ宿屋飯盛が書き残しています。そこに描かれていた“死に様”っていうんですか? それがとにかく面白くて。

蔦重本人が「俺は今日の昼に死ぬ」と言ったと。それで死ぬ前に店のことやら言伝やら、後のことをし終えて正午を迎えた。でもなかなかお迎えが来ない。

結局夕方まで生きていて照れ臭そうに笑った、とか書いてあるんですね。

そのお話を知った瞬間、もうね、ほんまかいな!って。そしてとにかく「そこに向かって走ろう」と決意しました。あの人たちのことだから、これも戯作かもしれませんが(笑)。

蔦重の臨終での話を横浜流星さんにしたとき「いいなあ。俺もそんなふうに死にたいですね」っておっしゃったんですよね。書き終えてみて、やっぱり私も「あんなふうに死ねたらいいな」と思っています。

実際、理想の臨終なんじゃないですか?

それに加えて、そこまでの蔦重が頑張ってきたことの集大成みたいなことを描きたいなって。そういう思いを全部込めた最終回になったんじゃないかな、と思っています。