団地に取り残されてしまった少女の幽霊
そしてこの団地では、かつて父子家庭で暮らしていた少女・河合美津子〔演:小口美澪〕が行方不明となっている事件が起きていたことが明らかになる。美津子はひとりで屋上で遊んでいたところ、誤って貯水タンクに転落し、亡くなっていた。一人娘を失った父親は団地から引っ越していき、美津子の幽霊はひとり、この団地に取り残されてしまったのである。
淑美たちが団地の内見に訪れたとき、幼い子どもが二人いる家族連れが内見を終えて帰ろうとするところとすれ違っている。すべての部屋が同じ間取りであるとは限らないが、淑美たちが暮らす部屋の間取りは2DK程度であるようだし、この団地は基本的には家族向けの物件であろう。淑美たち親子にも、そして美津子たち親子にも、この団地は広すぎた。
集合住宅においては、借りている(あるいは所有している)部屋以外は他人の場所であり、「知っている場所」よりも「知らない場所」のほうがはるかに多いのである。だからこそ、美津子の父親は「屋上の貯水タンク」という美津子の遊び場所を知らず、彼女を見つけることができないまま団地を去ることになってしまう。
そしてそれは人間関係においても同様のことが言え、郁子にとって、美津子、いや、「みっちゃん」は「大人(親)が掌握していない友達」なのである。そして、美津子の幽霊が郁子を狙っているかのような物語を展開されていく中で、美津子の真の狙いは母親、すなわち淑美であることが明らかになる。美津子は友達がほしいのではなく、団地でずっと一緒に暮らしてくれる母親がほしくて、淑美・郁子親子に近づいたのだ。
