Jホラーは「母親」という存在を印象強く描いてきた
矢口はパンフレットにおいて、『ドールハウス』というタイトルの意図を次のように述べている。
本来、“ドールハウス”というのは人形を住まわせるおうちで可愛らしいイメージですが、人形側が主体になって暮らしている家でもある。今回のお話では子どものおもちゃとして登場した人形が家庭を手に入れようとするので、ダブルミーニングとして付けました(※2)。
家族、とりわけ母親をめぐって生きている子どもと死んでいる子どもとが対立する図式となる物語において、当然と言えば当然かもしれないが、生きている子どもは怨霊に太刀打ちできない、あまりにも無力な存在として描かれる。
しかし、だからこそ、『仄暗い水の底から』の母親・淑美が自らの命を犠牲にしても(死後も団地に囚われ続けることになったとしても)自分の子どもを守ることを成し遂げたり、最終的には怨霊の狡猾な罠にかかって夫(父親)の忠彦〔演:瀬戸康史〕もろとも「礼の家族」の一員にさせられてしまうものの、『ドールハウス』の母親・佳恵が子どもを守るために奔走したりすることで、Jホラーは「母親」という存在を印象強く描いてきた。
※2…『ドールハウス』パンフレット、「PRODUCTION NOTES」頁数表記なし
※本稿は、『Jホラーの核心: 女性、フェイク、呪いのビデオ』(早川書房)の一部を再編集したものです。
『Jホラーの核心: 女性、フェイク、呪いのビデオ』(著:鈴木潤/早川書房)
なぜ幽霊は「髪の長い女性」なのか、なぜ「ビデオ」が呪いを伝播させるのか。
『リング』『呪怨』ほか黎明期の名作から『変な家』『近畿地方のある場所について』に至るまで、気鋭の映画研究者がジェンダー/メディアの観点でJホラーの本質を緻密に分析する。




