一族の女性たちだけに降りかかる「呪い」
映画『おろち』は、原作マンガのうち「姉妹」「血」のエピソードをもとに、門前家の女性たちの物語として構成されている。そして、物語の中心に置かれているのは彼女たちの「顔」をめぐる問題である。
門前家の女性たちは、一定の年齢になると美しい顔貌が醜く崩れてしまう運命にある。それは一族の女性たちだけに降りかかってきた「呪い」であり、男性たちが関与する余地はない。
それゆえに、映画『おろち』に登場する男性たちは無力だ。撮影所のプロデューサーである大西〔演:山本太郎〕は、20年前に引退した門前葵の復帰作で大儲けを狙い、一草・理沙姉妹にそれぞれ甘言をささやいて近づくが、一草にボウガンを向けられると、理沙を盾にした挙句、情けなく悲鳴を上げて屋敷から立ち去るしかない。
執事の西条〔演:嶋田久作〕は、おろちの虚偽の申告を見抜くことができず、異なる血液型の血を一草に輸血させてしまった挙句、彼女にボウガンの矢を射られて殺される。門前家の男性たち(葵の父、葵の夫)が一切登場しないのも、この物語が「女性」たちと彼女たちの「顔」の問題を描くために先鋭化されているからだ。
だからこそ、本作では主要人物である門前家がショービジネスの世界に生きる女性たちの一族として、そして美貌の崩れるタイミングが29歳に設定されたことに、キャスティングの都合を超えた大きな意味が生じてくる(※1)。美しい顔貌を何よりの武器とするスター女優にとって、加齢による老いは避けることができない壁である。
※1…原作では18歳である。なお、筆者が聞き手を務めた「高橋洋インタビュー 〜異物と混入〜」(『SFマガジン』2025年10月号、早川書房、78─83頁。2025年7月6日収録)では紙幅の都合上当該部分の掲載が叶わなかったが、門前葵・一草役の木村佳乃に合わせた変更であるとのことであった。
