「タイムリミット」を迎えた門前家の女性たちは……
映画『おろち』の予告映像やポスターでは、「美の崩壊は女の終わり」「美の崩壊は、女の最期」といったキャッチコピーが用いられていた。
また、本作で脚本を務めた高橋洋は、門前家の女性たちの生業を「女優」と設定したことについて、以下のように述べている。
自分の美しかった姿に妄執を抱いている人間は誰だろうか? と考えたときに、それはやっぱり女優だろうと。時代も昭和25年ぐらいの設定なので、まだ「銀幕の大スター」という言葉があって、今より遥かに観客と映画の距離が離れていて、さらにそのバックステージの話なので、別世界という感じも出せるだろうと思ったんですよ(※3)。
本作において、「タイムリミット」を迎えた門前家の女性たちは屋敷の「上の部屋」に幽閉される。二度と人前に立つことは許されず、暗闇のなかでうなり声を響き渡らせる醜い怪物になり果てるしかないのだ。彼女たちにとって、美貌の終焉は女優としてのキャリアのみならず人としての終焉をも意味してしまうのである。
※3…『おろち 楳図かずおの世界』小学館集英社プロダクション、2008年、42頁