定信と蔦重

今回、松平定信役をお願いした井上祐貴さんは若くて実直、でもどこか神経質な雰囲気も持っていて。それが若き定信の”危うさ”とよく重なりました。

(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)

人って、偉くなるとどうしても頑固になったり、周りが忖度したりしますよね? それでいて、定信は周囲に高橋英樹さん演じる徳川治貞らが構えているから、虚勢を張らなければならない部分もあったり。

対して蔦重の場合、いくら立派になっても、ていさんやつよさんに歌麿など、苦言を呈してくれる人が常に周囲にいた。そのあたりが蔦重とは正反対な存在でした。

一方で、ドラマでも描きましたが、定信も絵や文に造詣が深い。実際、白河に戻った定信は、自ら黄表紙を書いたり、自分の出版物に太田南畝や山東京伝を関わらせたりと、文化に対して深い愛情があったとされています。

そんな共通点を持つ2人だからこそ、並んで映ると物語に奥行きが生まれる。井上さんがこの役を全身で受け止めてくれたおかげで、定信という人物がしっかり立ち上がりました。