(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)
2025年度の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。日本のメディア産業・ポップカルチャーの礎を築き、時にお上に目を付けられても面白さを追求し続けた人物〈蔦重〉こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描いたドラマもついに完結。そこで放送を終えての感想を『べらぼう』の制作統括・藤並英樹さんから伺いました。(取材・文:婦人公論.jp編集部 吉岡宏)

最終回で描きたかったこと

『べらぼう』の最終回を作るとき、最初に考えたのは「蔦重の最期をどう描くか」でした。

彼の晩年については、墓碑の記述を含めてある程度の資料が残っていて。脚本の森下佳子さんからは「これは最終回でやりたい」と、制作初期の段階から明確に言われていました。

せっかく残っている史実だから、ちゃんと画面に落としたい。その思いが私の中にも強くありました。

蔦重の晩年を描くということは、写楽や絵師たちとの賑やかな時代から一歩引いて、人生の終盤で彼が何を見ていたのかを丁寧に追うことでもあります。

(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)

書物問屋の株を持ち、江戸にとどまらず全国へ流通を広げ、作家や思想家たちと向き合い、“書をもって世を耕す”という彼自身の信念を、生涯の最後まで実践しようとした。

その姿こそ最終回で描きたかった「晩年の蔦重」でした。