この時代を舞台に選んで本当に良かった

あらためて『べらぼう』の舞台となった江戸中期は、戦(いくさ)のない時代です。それもあって私自身も最初、「この時代は大河ドラマにしづらいのでは」とどこかで思っていました。

しかし実際に取り組んでみると、むしろ現代的なテーマを含んだ時代であることに気づかされました。

藤並英樹さん/(c)NHK)

確かに戦がなくとも飢饉が起こったり、格差や困窮、社会的・経済的な行き詰まりがあるなど、今の私たちにも通じる問題が多く存在した。

ドラマの中でも、米を巡っての暴動はもちろんですが、”佐野大明神”のくだりでは、今のSNSのように噂が真実となって広がっていく様子や、読売が世論を動かす構図など、現代に近い現象を物語として描くことができました。

特に『べらぼう』において、貧困や格差といった問題は避けて通れないテーマ。

扱うのが難しいとわかっていながらも、演出を含め、森下さんとも「描くならきちんと描こう」と話し合いましたし、現代にもつながる社会問題として丁寧に扱うべきと考えました。実際、深く掘り下げて描いたことで、作品に厚みが生まれたように感じています。

そして何より静かな時代だからこそ、ひとりひとりの考え方や人生、その生きざまを丁寧に描くことができました。

(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)

瀬川やうつせみ、誰袖のような女郎のみでなく、鶴屋、新之助、佐野政言…。

視聴者の皆さんがさまざまな人物に感情移入してくださったことが、その証だと思います。

結果として、この時代を舞台に選んで本当に良かった。今ではそう思っています。

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大河ドラマべらぼう~蔦重栄華乃夢噺~

【NHK公式サイトより】
大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築き時にお上に目を付けられても面白さを追求し続けた人物〈蔦重〉こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯。笑いと涙と謎に満ちた〈痛快〉エンターテインメントドラマ!

【キャスト】
横浜流星/安田顕/小芝風花/岡山天音/寛一郎/市原隼人/片岡愛之助/高橋克実/里見浩太朗/渡辺謙 

【作】
森下佳子

【放送予定】
[総合]日曜 午後8時00分 / 再放送 翌週土曜 午後1時05分
[BS・BSP4K]日曜 午後6時00分
[BSP4K]日曜 午後0時15分/ (再放送)日曜 午後6時00分