見慣れぬ髷を結った男
やがて川の中へと辿り着いた治済。
追っ手を振り切ったことを確信すると、不気味な笑い声をあげます。そして「待っておれよ……傀儡ども!」と吐き捨てるように叫び、刀を高く掲げて天を仰ぎました。
その瞬間、空を切り裂くように雷鳴が轟き、稲光が一直線に治済の身体を貫きます。なす術もなく地に崩れ落ち、そのまま動かなくなった治済。逃亡劇は、衝撃的な最期を迎えることになりました。
それから場面は変わり、江戸城。治済と入れ替わり、城に入っていた斎藤十郎兵衛が蔦重とやりとりをしていると、そこへ田沼意致が慌てた様子で駆け込んできます。
「道中、あの方が逃げ出したところ、雷に打たれて命を落とされたと……。傍らには、見慣れぬ髷を結った男が立っていたそうにございます」
その言葉とともに目を見開いたまま地面に横たわる治済の亡骸が画面に映し出されます。そしてその傍らには、かつて源内が身につけていたものと同じ紋様の着物をまとった人物の姿が…。
思いもよらぬ報せに、蔦重と十郎兵衛は言葉を失うのでした。