バラエティやラジオではユーモアと知性をにじませ、芝居では繊細な感情を表現。クセのある役では唯一無二の存在感を発揮する。舞台俳優としても評価が高い稲垣吾郎さん(52)が、1942年の初演以来、英国で繰り返し上演されてきたラブコメディ『プレゼント・ラフター』(PARCO劇場)で主演を務める。20世紀英国を代表するマルチアーティスト、ノエル・カワードの半自伝的作品で、稲垣さんが演じる俳優のギャリーは、自己愛が強くて面倒くさい、でもどこか憎めない人物。「僕に合ってそうな作品」と語る稲垣さんに作品への思いを聞いた。(取材・文:婦人公論.jp編集部 撮影:本社・奥西義和)
ウィットに富んだラブコメ
今年は7月からずっと舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に出演していました。ハリー・ポッターは大エンターテイメント作品だったので、ちょっとシンプルな会話劇をやりたいと思っていたところだったんです。気分も変わりますし、10年ぶりのPARCO劇場ということで、今からすごく楽しみにしています。
『プレゼント・ラフター』は2017年にはケヴィン・クライン主演でトニー賞を受賞したこともある評価の高い作品。ウィットに富んだラブコメディなので、僕に合ってそうですよね。(笑)
<舞台は、人気俳優・ギャリーが住む高級アパートの一室。誰からも好かれるギャリーだが、芝居がかった性格でナルシスト気味。まもなく仕事でアフリカへ出発する予定のギャリーのもとには、ファンの女性や脚本家志望の青年など個性的な人たちが訪れ、騒動に――。別居中の妻、リズを倉科カナが演じる>
ギャリーは自意識の塊で神経質。プライベートでも演技をしてしまう人物です。ちょっと寂しがりなところもあって、人にいい顔をしたがる。ラブコメディですが、恋愛ものというのとは少し違うかな。人にモテていたくて、その結果いろいろな騒動に巻き込まれます。
男の人にも女の人にも好かれていたいのは俳優の性みたいなもの。自分にもそういうところはちょっとあるかもしれません。ギャリーは人前ではポーカーフェイスなのに秘書や使用人など身内には厳しくてわがままも言う。アフリカでの仕事が決まっているのに、行くのを嫌がって駄々をこねます。すぐイラついて、すぐに機嫌が戻るのはかわいらしいですよね。