フィギュアスケート男子の魅力を伝える、『婦人公論』の人気連載「氷上に舞う」。2019-20シーズン開始から、注目スケーターたちの素顔を、カメラマン・田中宣明さんの写真と文とともに紹介してきました。現在発売中の『婦人公論』5月12日号で最終回を迎えた本連載を、特別にウェブで公開! 10日目は最終回「羽生結弦選手」です。(撮影・文=田中宣明)
※本記事は、『婦人公論』2020年5月12日号に掲載された記事の一部を再構成したものです
※本記事は、『婦人公論』2020年5月12日号に掲載された記事の一部を再構成したものです
観る者の心をつかんで離さない引力
2020年3月に行われる予定だった世界選手権が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止された。突然の閉幕となってしまった2019−20シーズンは、それでも僕にとって印象に残る一年だった。
2月にソウルで四大陸選手権が開催され、同大会初優勝を果たした羽生結弦選手。それにより、彼は男子フィギュアスケーターで初めて、ジュニア、シニアを通して主要国際大会を制覇する「スーパースラム」を達成したのだ。
僕が羽生選手を初めて見たのは、05年の全日本ノービス選手権だ。 知り合いのカメラマンから、当時の世界王者エフゲニー・プルシェンコをもじって「ゆづシェンコ」と呼ばれる選手がいると聞き、会場に着いて真っ先に彼の姿を探した。
当時10歳の彼は、その世界王者を彷彿させる美しいビールマンスピンを披露していた。髪形もプルシェンコそっくりに真似した、一見かわいらしい少年。しかし演技は柔軟性とキレのあるスケーティングが印象的で、今も深く記憶に残っている。
羽生選手は、僕のカメラマン人生を大きく変えてくれたと言っても過言ではない。今まで数えきれないほどの写真を撮ってきた。それは彼が、子どものころから常にフィギュアスケート界のトップを走り、かつこちらの想像をはるかに超える活躍をしてきたからだ。