20代の頃の西城秀樹さん(写真提供:中央公論新社)

思えば、若いころは、若さゆえにどちらがイニシアチブをとるか、などのつまらないところで張り合ってしまい、失敗してきたように思います。そういうケンカは消耗するだけで進歩がありませんよね。それから、僕がこれだけ愛しているのだから、これだけ返してくれて当然だろうみたいな、どこか見返りを求める気持ちが強かったかな。

見返りを求めると、ちょっとしたことで裏切られた気分になり、傷つきます。ところが、そういう気持ちから解き放たれると、人間自由になれる。自分が好きでやっていることなんだからと思えれば、自分ばかりか相手も自由にしてあげられる。

年齢を重ねてやっとたどりついた境地っていうんですかね、ようやくメンタルな部分で女性と対応に話ができるくらい大人になれた、そんな気がするな。男は、腕力を持ってしまった分、女性よりも感情面の成長が遅いんじゃないかと思えてならないんですよ。

人間関係でも、女の人同士ってすごく気を遣い合っていますよね。男が考えるより、ずっとデリケートな問題を抱えながら、生活しているんだと思う。やっぱり、一緒に暮らすなら、そういうところに気づいてあげないといけないでしょうね。

 

互いに尊重し、理解し合ってステップアップできる夫婦に

彼女との生活の中で心がけていることは、自分のためだけに使える自由な時間を、彼女が充分に持てるようにするということですね。1人で生きていける人間が2人で一緒にいるわけですからね、必要以上の共同作業は疲れるはずなんだ。

そういうときに、相手に「邪魔です」とは言えないじゃないです、だからそれをこっちが察して、距離を置く、さりげなく外出する、そんな気の遣い方をしているつもりなんですが、どうなんだろう? その距離感が彼女にとってほどよいのかどうかはわかりません。でも、これから先、長いですからね、だんだんに互いに感じ合って、呼吸が合っていくといいなあと思います。

それから感謝を忘れないことかな。あれも頼むよ、これも頼むよ、やって当たり前だろ、では、女性は空中分解してしまいますよ。夫のため家のために耐え忍ぶという女性の姿、これを今の時代の女性に求めるのはしょせん無理。1人の人間として生きたいと思うのは当然のことなのだから、そこは尊重しないと。男が考え方をチェンジできないとだめでしょう。

どうしても協力が必要なときだけ、「ここはひとつ頼むよ、協力してくれるかい?」と聞く。相手がどうしてもできないなら、別の方法を考える。頼んでやってもらえたなら、夫婦間でも「ありがとう」としっかり口にする。スタートしたばかりなんで、偉そうなことは言えませんが、思いやる気持ちというものは、こういう日常の中で、表わしていきたいです。