2004年、自宅で長男・慎之介くんと(写真提供:木本美紀さん)

たとえば、僕の仕事は不規則ですから、夜遅く帰ってきて、翌日は朝4時起きなんてことも頻繁にあるんですね。ここで「朝頼むよ」とは言わない。彼女にも、翌日の行動予定があるはずですしね。だから「早いから朝ご飯はいらない」と言う。これ本音です。それでも、彼女は朝起きてつくってくれる。もちろんうれしいけれど、「ここぞというときは、お願いするから無理しなくていい。最初からとばすなよ」とも言ってあります。

僕がこんなふうに考えるようになったのは、自分の両親を見ていてのことなんです。父が頑固一徹、母は3歩下がってついていく、女が耐え忍ぶ「おしん」の時代の夫婦像そのものでした。母親を見ていて大変だろうなあと思ったことはもちろんですが、威張り散らして家族を引っ張っていく父親も、何だか大変そうに見えた。

僕は、互いに相手を尊重し合い、理解し合おうとすることで、ともにステップアップしていけるような夫婦でありたいなと思うんです。2人の時間を一緒に楽しいな、たいへんだね、と感じ合っていきたいのでね、頑固一徹というわけにはいきませんよ。

結婚して3ヵ月半。彼女はどう思っているのかなあ。考えてみれば、朝「今日は早く帰る」と言って出かけておいて、深夜にべろべろに酔っぱらって帰宅、なんてことも何回かありました。洋服のままベッドに倒れ込んだはずなのに、朝起きたらパジャマを着ている。こういうことが3回くらいあった。重くて大変だったと思いますけど、彼女は何も言いません。ただ、飲み過ぎとか体のことは心配するので、少し回数を控えないといけないでしょうね。

休みのときは、2人でよく出かけるし、1人でいても自分の時間を充実させられる人ですから、結婚生活を楽しんでくれているんじゃないでしょうか。自分の時間がジムへ行ったり、インドネシア語の勉強をしたりしているみたいです。活字が好きで、本や雑誌をよく読んでいますね。『婦人公論』も読むって言ってたな。まずいな、これ何月何日号ですか? 読むのかな、あいつ。そりゃあ、照れますよ、彼女も僕も。まずいな。(笑)

実はデビュー30周年を記念して出したシングル「Jasmine」は、彼女のために歌った歌です。僕らの出会いから結婚までの物語を曲に込めて、彼女に贈りました。音楽というものは、歌い手のメンタリティがストレートに表われるものなんです。これから2人の歴史を積み重ねていくにつれて、他人の痛みがもっと別な形で表現できるようになったり、深い理解に基づく世界を歌えるようになったりできたら、いいなあと思いますね。