厚生労働省の「患者調査の概況」によると、2023年に糖尿病で治療を受けていた患者総数は552万3,000人だったそうです。日本の深刻な健康課題である糖尿病について、国際医療福祉大学医学部教授で糖尿病専門医の坂本昌也先生は「“ちょっと血糖値が高い”という現象は、みなさんが考えているよりリスクが高い」と語ります。そこで今回は、坂本教授の著書『世界中の研究結果を調べてわかった!糖尿病改善の最新ルール』より一部引用、再編集してお届けします。
自覚症状がないまま放置される危ない病気が糖尿病
発症まで15年!? 軽い考えが事態を悪くする
糖尿病が手ごわいのは、境界型の段階を含め、発症までに10年から15年という長い時間をかけて進行するのに、その間ほとんど自覚症状があらわれないことです。血糖値が少しずつ高くなっていても体調に変化はなく、健診で「血糖値が高めですね」と言われても軽く受け流してしまう人が多いのが現実です。
実際の診療でも、境界型といわれる段階で病院を受診しても、「運動を頑張りましょう」「栄養指導を受けてください」と言われて終わってしまうことがよくあります。精密検査で75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の検査を受けて境界型が確認できても、「もっと悪くなったら来てください」と言われることもよくあります。
治療の対象になるのは糖尿病と診断されてから。境界型の人たちは本来なら対策を練るべき大事な時期にもかかわらず、責任を持って継続的に診る医師が極めて少ないのが現状なのです。
これが、「クリニカルイナーシャ」と呼ばれる、医療現場における治療の先送りです。医師も患者も糖尿病が進行していることを頭では理解していても、治療が後回しになってしまっていることがあるのです。
患者が「薬はまだ飲みたくない」と言えば、医師も強く勧めにくい。忙しい外来では1人に割ける時間は数分程度しかなく、食事や運動の具体的なアドバイスをする余裕も限られています。