脚本家としての考え方

――中園さん、『ドクターX ~外科医・大門未知子~』の大門未知子にはモデルが存在するのですか?

中園 男性のモデルとしたドクターがいまして、ニューヨークのスーパードクターなんですけれど。でもその人だけでなく、いろいろな人が混ざってます。基本的に日本にはフリーランスの外科医は存在しないのですが、麻酔科のドクターにフリーランスの人がいて、その方のお話を伺ったりもしました。

残間 これは私からの質問なのですけれど「私、失敗しないので」という決めゼリフはどうやって生まれたのですか?

中園 第1シリーズの第1話を書いていた時に、大門未知子のキャラクターだけがなかなかできなくて、プロデューサーに叱られながら苦しんでいたんです。その頃、ちょうどテレビでロンドンオリンピックを放映していて、女子柔道の松本薫さんがものすごい闘志をみなぎらせている姿を観てました。松本さんが金メダルを取って、松岡修造さんのインタビューの中で「ミスしたらどうしようとか思いませんでしたか?」と訊かれて「私、ミスはしないので」って言ったんですよ。カッコイイと痺れてしまって。「私、ミスはしないので」と言い切る自信というのは、それだけ修練を積んできた証しなのだし、さまざまな経験を経て、何があっても揺るがない強い精神力を備えているのもひしひしと伝わって来るなと思った瞬間に、大門未知子に必要なのはコレだ!と閃いて、「私、失敗しないので」とアレンジしてセリフにしたらキャラが立ち上がって、動き始めたんです。

イメージ(写真提供:Photo AC)

――お二人には推しの役者さんはいますか?

大石 特にいないですねぇ。

中園 あ、そうなんですか? 大石さんはぜんぜん名もない男優さんをトップの役者さんにする天才なのに。私いつも、大石さんに「今、誰がきてる?」って訊いてます。年上の男性にしか興味がなく、若い男優さんはみんな同じ顔に見えちゃったりするので。

残間 大石さんにはいないんですね?

大石 どういうプロデューサーとやりたいかというのは凄くあるんですけど。あんまり役者にこだわりはなくて、どんな球でも打つと決めてます。でもチームを組んだらキャストを愛して、このドラマで知名度や好感度を上げたり、実力が認められたりしたら嬉しいなと思います。

――脚本家にとって一番重要な才能は何だと思いますか?

中園 人が好きであることかなと。人が人を描いて大勢の人に観ていただくのですから、人間が好きでないと脚本は書けないのではないかなと思います。

大石 喋り言葉に敏感であることでしょうか。私達が書くのは文章ではなく喋り言葉ですから、特殊なセンスが必要だと思います。私は子どももいないし、若い子の喋り言葉から遠くなる一方なので、電車の中とかで若い人にさりげなく近づいて、何を話しているのかではなく、どんな表現をしているのか、どんな口調で喋っているのかを、耳をそばだてて聞きます。

中園 確かにしゃべり言葉に敏感であることは大切ですね。私も若い頃、男の人と食事をしていても、周りの人の話に聞き耳を立てていて、「僕の話、聞いてる?」って100回くらい言われました。(笑)