フェミニストの反対

避妊の主導権を男性に奪われて傷つく女性たちを目の当たりにしてきましたが、日本人女性が「本当の意味での自立」を求めているのか、疑問に思うこともありました。

1990年に、外国通信社の記者から「女性の自立には生殖コントロールが不可欠なのに、日本の女性は男の医者や役人任せで政府にピル認可の陳情をしたり、圧力をかけたりしたという話は聞きませんね」と言われたんです。

印象に残っているのは1994年、アメリカやカナダを回ってピルの専門家と意見交換をした時のこと。「科学的にピルの安全性や有効性を伝えることはできるけれど、ピルを飲むのは日本の女性たち。私たちは日本の女性の口のなかにピルを押し入れることはできません」と言われたんです。

日本家族計画協会の北村邦夫会長
日本家族計画協会の北村邦夫会長

「女性たちを動かさなくちゃいけないんだ!」と気づいて帰国したその日に偶然、人口問題について話し合った「カイロ会議」の報告会が日比谷であると知って足を運びました。いわゆるフェミニストと呼ばれる人たちが参加していたんです。そこで、僕は「避妊方法の選択肢が限られているために中絶を余儀なくされているという現実がある」と低用量ピルが承認されていない現状を訴えた。そうしたら「日本人女性の体を痛めつけようとするのか」「女の体を薬漬けにするのか」と猛反論された。

「ピルは危険な薬」というイメージがついてしまっていたんです。1970年代前半に、中ピ連(中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合)が過激なパフォーマンスをしたことで怖いイメージがついたのかもしれません。それに当時は、月経困難症の治療薬として承認されていた中・高用量ピルを避妊のために飲んでいた女性が多くいました。低用量より副作用が重いから「危険なピル」と思ってしまったんでしょうね。