クルーズは授賞式に出席すらしなかった

コロナ禍の影響で低迷が続いた時期に世界興収15億ドル近くの大ヒットとなり、「映画界を救った」とスピルバーグに言わしめたこの作品のノミネートは、興行ヒット=一般観客からの支持、がいかにアカデミー賞を左右するかを証明した結果になったが、このノミネーションを可能にしたのは、クルーズ自身の映画に対する愛と、たゆまぬ努力であった。

単なるポップコーン映画と捉えられていたオリジナルの『トップガン』や『アルマゲドン』『パイレーツ・オブ・カリビアン』等、超人気作品のプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーのオスカーノミネーションは、20年前には絶対に想定できなかった。

『トム・クルーズの真髄 40年間トップに立ち続ける理由』(著:メラニー/星海社)

ブラッカイマー作品初となった本作の作品賞ノミネートは歴史に残る大快挙だったが、クルーズは授賞式に出席すらしなかった。映画業界を救ったヒーローにとって、その副産物であるオスカーノミネーションはもはや、どうでも良いものになっていたのだろう。

栄誉ある作品賞ノミネート作品の主演俳優が授賞式に欠席した事実を、アカデミーはどう受け止めたのか。

特にコロナの打撃から回復していない時の授賞式である。この時、アカデミーはおそらくそれまでクルーズにしてきた冷遇が、このスーパースターをオスカーから遠ざけてしまったことを身に染みて感じたに違いない。

もともとオスカーを必要としていなかったクルーズにとって、受賞する可能性のない授賞式に出る必要など更になかった。