地道に仲間を増やしていった結果、今やそのネットワークは漁業関係者へも広がっている。
「日本海で獲れたアジや、サバ、ブリ、イカ……。毎年、和歌山からはシラスやアユが届くのが楽しみで」と、俊輔さん。
綾子さんのブログには、全国から届いた新鮮食材で作った料理がズラリと並ぶ。
「料理の分担は夫と半々ですね。たまに、初めて見る野菜が届くこともあって、『これ、どうやって調理するんだろう?』と、試行錯誤しながら作ることもあります」
届いた食材は、ご近所にお裾分けすることも。
「農家同士の物々交換は、スケールが違います。ジャガイモが10キロ、米が30キロ、どーんと届くんです。僕らだけでは食べきれないほど(笑)。12月には、毎年あちこちの飲食店からクリスマスの定番スイーツ・シュトーレンが20本くらい届くので、《食べ比べの会》を開くんです」と俊輔さん。そこにまた人が集まって、物々交換の《二次的なつながり》が生まれるそうだ。
俊輔さんは、「自分たちで買わなくても食料が手に入る安心感が得られました。70軒もの物々交換仲間がいれば、何かあっても助け合える。それが心強いんです」と話す。綾子さんも隣でうなずき、こう続けた。
「知らなかった野菜が届くと、生産者さんから『こういうふうに調理するとおいしいよ』と教えてもらえることもあります。スーパーで、作り手の顔が見えないまま買うのとはまったく違う。人のぬくもりを感じながら食卓が豊かになっていくのが、いちばんの魅力ですね」
生産者ならではのダイナミックな物々交換は、《作り手の底力》を感じさせてくれた。
【ルポ】財布にやさしく、心にゆとりを生む物々交換
(1)作り手たちの豊かなつながり―― 藏光農園
(2)地域全体で循環を目指す―― 京都府亀岡市
(3)愛着のある品が集まる店―― 物々交換コレコーレ