なんと、日本人は「痛み」や「不安」も感じやすい
つまり、日本人は、遺伝的に脳疲労に陥りやすい人種なのです。そして、追い打ちをかけるようで申し訳ありませんが、それだけではありません。
じつは、私たち日本人は「痛み」も感じやすい民族だということが、近年の研究で明らかになったのです。
これは、私が脳神経外科手術の腕を磨くため、アメリカのノースカロライナ州にある病院に留学していたときの話です。そこで、私はある出来事を目の当たりにし、衝撃を受けました。
その病院は、世界中の難病患者が集まる、脳外科手術の世界的拠点。日本での経験からすれば、大きな脳外科手術の後、患者さんには少なくとも1週間以上は痛み止めを処方し、退院までに1ヶ月程度かかるのが普通です。
ところが、欧米人の患者さんたちはまったく違いました。
ヨーロッパから手術を受けにきた患者さんが、大手術だったにもかかわらず、2~3日で退院し、そのまま飛行機に乗って帰国してしまうではありませんか!
現地のドクターたちは、当然のように「アングロサクソンは痛みに強く、日本人は痛みに弱いのは、世界の常識だよ」と話していました。
この術後の痛みに対するアプローチは、脳外科手術に限った話ではありません。出産や分娩(ぶんべん)を例にとっても、その差は明らか。日本では、産後に1週間程度の入院が一般的ですが、アメリカでは出産の翌日に退院することも珍しくないのです。
海外での出産を経験した日本人夫婦が「まさか、翌日に退院だと言われるなんて思ってもいなかった」と戸惑うケースもよく耳にします。
日本人が欧米人と比べて痛みに弱い原因も、先ほどお話ししたS型遺伝子が関係していると考えられています。なぜなら、セロトニンには痛みを和らげる働き(疼痛<とう つう>緩和)もあるからです(加えて、不安感を抑制する働きもあります)。
つまり、日本人はS型遺伝子を持つ割合が非常に高いため、このセロトニンによる抑制が働きにくく、結果として痛みや不安を感じやすい傾向にあるわけです。