農耕民族にとって大切だった「S型遺伝子」

「どうして日本人だけがこんな体質なんだ!」

こうツッコみたくなる人も、多いと思います。

(写真提供:Photo AC)

では、なぜ私たち日本人は、欧米人よりもS型遺伝子を多く持つことになったのでしょうか。

その答えは、はるか遠い祖先から続く、世界でも類を見ない「島国」というユニークな地政学的環境と、私たち独自の歴史に関係していると考えられています。

欧米、特にアングロサクソン系の人々は、基本的に狩猟民族の末裔(まつえい)です。彼らは広大な大陸を移動し、獲物を追い、時には自らの権利を主張するために争うことも厭(いと)わない、強い闘争本能を持っていました。

想像してみてください。厳しい自然環境の中で生き抜く上で、野獣や敵と戦った後にぐったりと疲れ果てていては、次の危険に対応できませんよね。また、傷を負って「痛い!」と立ち止まっていては、すぐに敵に命を奪われてしまうでしょう。

こうした極限の環境が、「疲れ」や「痛み」に鈍感な遺伝的傾向を形作ったと考えられています。つまり、アングロサクソン系におけるS型遺伝子は生存に不利なため淘汰され、疲れや痛みを抑制する脳のシステムが発達したわけです。

それに対して、日本人のルーツは少し異なります。

縄文時代には狩猟民族でしたが、弥生時代に入ると本格的に農耕生活が主流になりました。狭い国土で集落を作り、互いに協力しながら暮らす。そんな生活の中で育まれたのが「和を重んじる」という日本独特の気質です。

こうした環境下では、「疲れ」「痛み」「不安」といった信号に敏感であるほうが、むしろ集団の存続と個人の安全を守る上では有利に働きます。

・疲れやすいから、無理をしないで体を休める
・痛みに敏感だから、体の異常に早く気づき、大事に至る前に対応する
・不安を感じやすいから、事前にリスクを察知し、しっかりと備える

これらの感覚に敏感になっていったがゆえに、今日の日本人はS型遺伝子を多く持つことになったのです。