イメージ(写真提供:Photo AC)
高齢者が高齢者の親を介護する、いわゆる「老老介護」が今後ますます増えていくことが予想されます。子育てと違い、いつ終わるかわからず、看る側の気力・体力も衰えていくなかでの介護は、共倒れの可能性も。自らも前期高齢者である作家・森久美子さんが、現在直面している、96歳の父親の変化と介護の戸惑いについて、赤裸々につづるエッセイです。

前回〈97歳、認知症の父はクーラーをつけてくれない。誕生日は父の好きな六花亭へ。父のダブルピースを初めて見た。…〉はこちら

老々介護のスタートから4年

婦人公論.jpでエッセイ『オーマイ・ダッド! 父がだんだん壊れていく』連載が始まってから4年の月日が流れた。連載開始時の父の年齢は93歳、私は65歳。配信される度に、前書きの「老々介護」が目に入る。もちろん一つ目の「老」は父で、二つ目の「老」は私のことを指している。

父を「老人」と呼ぶことに異論はない。しかし65歳になったばかりの私は、前期高齢者のスタートに立った直後だ。仕事をしているし、時間がある時はスポーツクラブに運動に行く。はつらつとした60代のつもりでいるのに、「老人」のカテゴリーに入ることに抵抗があった。

連載開始時は父の家に毎日行って世話をしていた。娘が親の面倒を見るのは当たり前と思っている父。認知症になっても口は達者で、日常の様々な場面で私としょっちゅう衝突していた。

夕食後に父がパジャマに着替えて歯磨きをしたのを見届けてから、私は帰宅して睡眠を削って机に向かって仕事をする。こんなに元気でも「老々介護」に入るのか疑問に感じて、担当の編集者に電話で聞いてみた。

「私はかなり体力があるほうですし、仕事も介護も頑張っているつもりなのですけど、私も『老人』に入るのでしょうか?」

「65歳は、区分として前期高齢者になります。老々介護とは65歳以上の高齢者が、65歳以上の高齢者を介護することを指します」

 そうか、私は老々介護に分類される要件を間違いなく満たしていたのだ。インターネットで「老々介護」について調べてみた。厚生労働省の「2022(令和4)年国民生活基礎調査」によると、老々介護の割合は63.5%とある。これが高齢化社会の実情なのだ。