「だったら生活保護でいいんじゃない?」という誤解

若い人の中には「もらえるかどうかわからない年金のために保険料を払うぐらいなら、そんなもの払わずに、将来は生活保護受けた方がいいんじゃない?」という人もいます。しかしながら、これは大きな誤解なのです。

生活保護というのは、申請さえすればすぐに認められて支給されるというものではありません。何せ税金からまかなわれるわけですから、かなり厳格な調査が行われます。それは「ミーンズテスト(資力調査)」と呼ばれるもので、その人の収入や持っている資産だけでなく、家族や親族との関係やこれまでの人生について洗いざらい調べられるという厳しい調査なのです。

それに生活保護には「補足性の原理」というものがあり、働いて収入を得たり、社会保障や援助金等があったりした場合、その金額に応じて給付が打ち切られます。たとえば、東日本大震災の時に東京電力から支給された補償金が収入とみなされて、生活保護が打ち切られたこともあります。社会保険のように自分で保険料を負担した結果得られる給付と異なり、多くの人によって負担された税金から支払われることになるため、その運用が厳格になるのは当然と言っていいでしょう。

実際に2023年の時点での生活保護費負担金は3.6兆円ですが、この内の半分は医療費で、生活扶助として支給されている金額は1兆8000億円弱です(※1)。我が国の社会保障給付費は全体で約137.8兆円(2024年予算ベース)ぐらいですから、生活扶助として支給されている生活保護費は社会保障給付費用全体の1%程度しかありません。

人生100年時代、引退してからずっと窮屈に暮らす未来を望みますか?

「年金保険料なんか払わなくても生活保護を受ければいいや」というような甘い考えは持たない方が良いと思います。

(※1)「生活保護制度の概要等について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/001508773.pdf

※本稿は、『知らないと損する年金の真実 - 改訂版 2026年新制度対応 -』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

【関連記事】
<公的年金>は不幸に備える保険?想定する最も大きな不幸とは…お金のプロ「長生きしてもお金が全くなくなってしまえば、悲惨なことになりかねない」
よく見かける「年金は何歳から受け取れば得か」問題。しかし「年金を<損得>で考えても意味はない」とお金のプロが断言するワケ
<国民皆年金>誕生は昭和36年。では公的年金がなかった時代、働けなくなった人がどう生活していたかというと…お金のプロが解説

知らないと損する年金の真実 - 改訂版 2026年新制度対応 -』(著:大江英樹、大江加代/ワニブックス)

日本人の多くが勘違いしていた「年金」の真実を明らかにし、大反響を呼んだ新書の改訂版。

新たに法改正の時期を迎えた年金制度の解説など、大幅に加筆修正しました。

年金制度に何となく疑問を持っている、まもなく定年を迎える、老後のお金で失敗したくないなど、多くの方にとって必読の一冊です。