2026年2月6日から22日まで、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックが開催されています。開催国であるイタリアは、食をテーマに掲げた万国博覧会が開催されるなど、地域に根ざした食材や伝統の料理法が受け継がれた<食の多様性>が魅力の一つです。そこで今回は、龍谷大学政策学部・大石尚子教授の著書『イタリア食紀行-南北1200キロの農山漁村と郷土料理』から一部を抜粋し、その魅力に迫ります。
日本とイタリアの類似性
イタリアが統一されたのは、1861年である。明治維新と同じ頃。それまでは、地方が一つの国として存在する地方都市国家の寄せ集めだった。この歴史が、地域に根ざした強いアイデンティティを育むことにつながった。
日本でも、江戸時代には幕府が全国を統治したが、住民は藩の統治を強く意識し、藩に対するアイデンティティがより強かった。食の習慣も同様で、各地に郷土料理がある。
しかし、日本では、1970年代の高度成長期に、食生活が欧米化した。その代償として、地域食が失われた。核家族、共働き家庭が増え、ファストフードやファミリーレストランが普及した。外国産農産物が大量に輸入され、食のグローバル化が進展した。時間をかけて料理をしなくとも、コンビニ食で簡単に食事をまかなえるようになった。親から子へと引き継がれてきた郷土料理も、こうしたライフスタイルの変化から影響を受けている。
地方から都市への移住が加速し、都市型生活の中で郷土料理を振る舞い、振る舞われる機会が減った。地域の食文化が子から孫世代に伝わらず、消滅しかかっている。