イタリア農業の強み
イタリアも国土の70%を条件不利地域が占める。農業者の減少、耕作放棄地の増加といった課題を抱える。しかし、その中で、農業・農村は元気である。若者世代が田園回帰し、オーガニック栽培や伝統農法を復活させて、環境保全・循環型農業を始めている。それが豊かな食文化とつながり、イタリア農業の強みになっている。
ただ、伝統をそのまま継承しても、地域は再生しない。根本的な経済社会の課題解決には、新たな手法や新しい生産物、これまでなかった価値観、創造的な活動を生み出し、社会システムそのものを変革するソーシャル・イノベーション(社会変革)が必要である。伝統をまるごと踏襲するのではなく、伝統の中にある知恵や技を、現代の新たなアイデアやテクノロジーと融合させ、社会、環境、経済の持続可能性を実現する革新を生むことが求められる。
イタリアの食農をめぐる現在に至る活動にはそうした革新性がある。その食文化が魅力的に継承されているのは、それぞれの時代に起きた危機を、その都度、新しい考え方や価値の創造によって乗り越えてきたからである。
日本にも、「里山の暮らし」という自然と人が共生する時空があった。自然の循環を活かしながら農業を営む――そのために私たちの祖先は、いろいろな知恵を出し合い、持続可能な暮らしを創り出してきたのである。
※本稿は、『イタリア食紀行-南北1200キロの農山漁村と郷土料理』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『イタリア食紀行-南北1200キロの農山漁村と郷土料理』(著:大石尚子/中央公論新社)
「隣町に行けば言葉もパスタも変わる――。」
イタリア料理は味わいのみならず、多様性が魅力。地域の風土・歴史に根ざした食材や伝統料理法が受け継がれているのだ。
南・北・中央・島々をめぐり、ポベラッチャ(貧乏食)の知恵を足と舌で探る。 またアグリツーリズムや有機農業、スローフード運動など、地域再生のソーシャル・イノベーションにも注目。




