とはいえ、憎しみと処罰感情は分けて考えていますから、加害者には厳重な処罰を受けてほしいというのが僕の願いです。前例主義の日本の裁判において、これだけ大きな事故で軽い罪となると、この先も苦しむ遺族が増えてしまいます。

そしてなにより、法廷では加害者に真実を語ってほしい。なぜ、このような無残な事故を起こしてしまったのか。その真実が明らかにならないと、二度とこういう事故を起こさないための解決法もわかりません。

車を運転するとき、身近な人に向けるような愛を、車外に向けても持ってほしい、と僕はよくお話ししています。加害者の場合も、都内在住で公共交通機関が豊富にあり、高齢で脚も悪かったのですから、自分で運転しないという別の選択肢もあったでしょう。なぜもう少し配慮できなかったのかなあ、この人に2人は奪われてしまったのだなあ、と思う気持ちは一生消えません。

車がある限り、どう頑張っても事故をゼロにするのは難しいでしょう。死亡事故に限らなければ、全国で年間40万件近い交通事故が起きています。だから減らすための努力をしていきたい。あるデータによれば、2人に1人は一生のうちに交通事故に遭う可能性があるのだとか。

決して他人事ではない、と当事者意識を持つことは、皆さん1人1人ができること。法制度や地方の公共交通機関の整備、車の技術面の向上への働きかけは、私たち遺族が頑張ってやっていきますから。

僕たち3人の生活はもう取り戻せないけど、これ以上、誰かのかけがえのない日常が奪われてほしくありません。いつの日か再び真菜と莉子に会えたとき、「僕がやれることはすべてやったよ」と、胸を張って報告できるように。そのために、自分にできることをひとつずつやっていきたいと思っています。