数日前から頭痛が続き、仕事の合間に痛み止めをラムネのように噛み砕いていたら、副社長の篠崎から「こんな忙しい時期にぶっ倒れるつもりですか。早く病院に行ってください」と、にこやかに苦言を呈された。仕方なくいくつかの予定をキャンセルして午後を休みにし、会社近くの頭痛外来を訪ねた。MRI検査の結果に異常は見つからなかったものの、医者からは高血圧と睡眠不足、首回りの筋肉の強ばりとカフェインの摂り過ぎを指摘された。
「疲労が蓄積して、常に体が緊張しているんです。よく眠って、軽い運動で体をほぐして、とにかくリラックスする時間を持ちましょう」
 体の強ばりをとる薬と頭痛を緩和する薬を薬局で受け取り、傑は白く眩しい午後の光に満たされた通りへ出た。
 急に、なにをするべきかわからなくなった。
 薬を飲んで、それから……オフィスに戻って仕事を再開する? いや、リラックスしろと医者は言っていた。なら自宅マンションへ帰るか。でも帰ったところでまだ眠るには早い。半端な昼寝をしたら睡眠のリズムを乱しそうだ。
 仕事をせずに午後を過ごす、ということがよくわからない。
 傑はひとまず自販機でコーヒーの代わりにいくらか胃に優しそうなミルクティを買い、手近なベンチに腰かけて処方された薬を飲んだ。
 そして、次の行動を見失った。
 良い天気だ。しかし、やりたいこともやるべきこともない。痛み止めのおかげか頭痛はだいぶ落ち着いたが、全身がどことなくだるい。
 リラックスとはなんだろう。