
正面玄関横に設置された「雀の巣」のモニュメントが多くの来店客から愛されている、福来屋日本橋本店。親しみやすいデパートで、食品から衣服、日用品、貴金属など様々なものを扱っている。この福来屋に今日もまた、何かを買い求めるお客さんが足を運び――。
デパートを舞台にした、彩瀬まるさんのWEB連載小説、お楽しみください。 まともな休みをとるのは三週間ぶりだ。
休みといっても、午後のみだけれど。
昼下がりのオフィス街のベンチでぬるいミルクティを飲みながら、大川傑(おおかわすぐる)はまるで地球に降り立ったばかりの宇宙人のような気持ちで道行く人々を眺めていた。
日本橋という場所柄、目の前を行き来するのはスーツ姿の勤め人が多い。誰も彼も、目的地へ向かう道順以外はなにも目に映ってなさそうな無表情で、さっさと街を歩いていく。店舗や施設、季節の草花や空の模様といった数多の情報を素通りして、まるでターゲットをロックオンしたミサイルのような愚直さだ。
午前中の自分は、おそらく彼らとまったく同じ表情で取引先を行脚していた。そう思うと、状況の変化に軽い眩暈を感じる。
