
正面玄関横に設置された「雀の巣」のモニュメントが多くの来店客から愛されている、福来屋日本橋本店。親しみやすいデパートで、食品から衣服、日用品、貴金属など様々なものを扱っている。この福来屋に今日もまた、何かを買い求めるお客さんが足を運び――。
デパートを舞台にした、彩瀬まるさんのWEB連載小説、お楽しみください。 馬喰町駅にほど近い、倉庫をリノベーションした薄暗いレンタルスペースに一歩足を踏み入れた途端、傑はふたたび未知の惑星に迷い込んだような困惑を覚えた。
打ちっぱなしのコンクリートで覆われた冷えた無機質な空間のあちこちに、人がいる。
大小さまざまな人間が立ち尽くし、座り込み、横たわっている。彼らはとても静かで、微動だにしない。前衛的で不穏な舞台に出くわしたような動揺とともに、傑は手探りで壁の照明スイッチを探った。中指の先に触れたプラスチックのでっぱりを押し込む。一瞬で白い光で室内を満たし、無言で在り続ける人々を照らした。
光の下で見る彼らは、白っぽい木の枝を組み合わせて作られた立体作品だった。今にも顔を上げて話しかけてきそうな、あるいは寝返りでも打ちそうな生々しさを帯びている。しかしよく見れば体のあちこちからカラフルなケーブルを生やしていたり、枝の隙間から柔らかな花を咲かせてドレスのように身にまとっていたりと、生きた人間からはかけ離れた装飾が施されている。
このアーティストは、おととし個展を訪ねたときには人間ではなく動物をイメージした立体作品を多く作っていた。短期間で作風にずいぶん変化があったようだ。
ふいにアトリエ中央で横たわっていた一人が起き上がり、傑は思わず飛び退いた。背後の壁に肩がぶつかり、鈍い痛みが走る。
枝人間に囲まれながら寝袋に入って寝ていた人物は、肩を押さえてうめく傑を見て、「どなたですか」とのどかな声で聞いた。
