「どうすればって? なにがですか?」
「この人形です。どうすれば満足すると思います?」
「満足? 人形が、満足する?」
 意味がわからない。
 返答に迷い、傑は「ふ、服を着せてみるとか?」と苦しまぎれに口にした。適当な発言だとわかっているだろうに、時生は首を傾けて考え込む。
「服……どんな服ですか?」
「いや、どんな服って言われても……私みたいな平凡な人間から、そんな芸術的な発想は出てきませんよ」
 なにを考えているのかわかりにくい眠たげな表情で左右にゆっくりと頭を揺らし、時生は作りかけの枝人形に向き直った。深く集中した様子で、なにも話さなくなる。
 すごいな、と傑は内心で舌を巻いた。これがスポンサーに対する態度か。
 傑の会社は年間百万円ほど時生に対して支援を行っている。もちろんリターンもあり、時生の個展では必ずスポンサーとして会社名が入り口の目立つ位置に表示されるし、年に四回、流木を使った市民向けのワークショップを会社のロビーで開催してもらっている。それにしたって、金銭のやりとりがある相手を完全に無視して仕事に没頭するのだから豪気なものだ。
 他人の横顔を見ていても意味が無い。傑は呆れまじりに立ち上がり、作品が林立するアトリエを見回した。