「食事はなにがお好きですか。お若いし、肉料理とか……」
「あ、なんでも。大川さんのおすすめで」
「遠慮しないでください。福来屋の株を持っているので、株主向けの優待制度が使えてお得なんです」
「じゃあ、ここは大川さんの一押しの百貨店ってことですか」
「ああ、ええと、私というより、私の祖母が生き物が好きで――」
なにげなく答えながらふと、こんなにどうでもいいことを伝えてどうするんだと、ためらいが生じる。しかし口にしたことを途中でやめるのも気まずい。
「……祖母は、雀のイラストが入った包装紙を好んで、よく福来屋を利用していました。それで、なんとなく私も親しみを感じて、若い頃にまとまった量の株を買い、そのまま持ち続けているだけです」
「親しみ」
反芻し、時生はどこか意外そうに目を大きくした。
「おばあさまとは親しかったんですか?」
「まあ、普通に……」
なんの話だ、と鼻白む。
――ごめんね傑ちゃん。悪気はなかったんだ。
ほのかに湿った祖母の声が耳へよみがえり、傑はエレベーターの階数を表示している橙色のランプに目を逃がした。みるみる数字が増え、八階のレストラン階に到着する。
