正面玄関横に設置された「雀の巣」のモニュメントが多くの来店客から愛されている、福来屋日本橋本店。親しみやすいデパートで、食品から衣服、日用品、貴金属など様々なものを扱っている。この福来屋に今日もまた、何かを買い求めるお客さんが足を運び――。

デパートを舞台にした、彩瀬まるさんのWEB連載小説、お楽しみください。

 行き先として百貨店を選んだのは、ただただ妥当で無難だからだ。
 手土産でも会食でも、接待で困ったらとりあえず百貨店を使えば間違いがない。たとえ多少先方の好みを外したとしても、美しい包装紙と老舗の品格を伝える紙袋のロゴが、ビジネス上の誠意をきちんと伝えてくれる。
 それに、時生は普段山梨県の山中の工房で、ダムから撤去された流木をもくもくと加工し続ける素朴な暮らしを送っている。一年で最も豪奢に飾りつけられた師走(しわす)の百貨店に連れていったら、制作上のいい刺激になるかもしれない。
 傑の思惑通り、時生はクリスマス向けに飾りつけられたウィンドウディスプレイの前で足を止めた。有名な絵本のキャラクターの白猫たちが、美しいそりに乗って夜空を駆け、色とりどりのプレゼントをばらまいている。別のウィンドウでは、手分けして暖炉やツリーの飾りつけをしている。白猫たちはふわふわと毛並みを立たせた柔らかそうな姿で、プレゼントの箱を支えたり、ツリーによじ登ったりと、生き生きとしたポーズをとっている。きっとただの綿の詰まったぬいぐるみではなく、針金なり骨組みなり、なんらかの芯が入っているのだろう。