接待でときどき使うすき焼き専門店のランチ御膳を、時生は子供のように頬を紅潮させてうれしそうに平らげた。「こんなに柔らかい肉は今年初めて食べました」と無邪気な礼を伝えられ、「それはよかったです」と傑は笑んで応じる。顔色一つ変えずに同じものを食べながら、傑は次の段取りについて考えていた。
 食事のあとに探さなければならないのは――枝人形の装飾? 服か? 枝人形は大柄だった。なら、行き先は四階の紳士服売り場が適切だろうか。少し厄介なのは、時生自身、あの人形に施すべき装飾をとらえかねているように見えたことだ。
 そもそも、時生はどうして流木で人間を作り始めたのだろう。
 出会ったばかりの頃、時生は流木を用いた生活雑貨をよく作っていた。枝を長さ順に並べて結んだ魚の骨格のような壁飾り、ふっくらとした半球形に枝を組み上げたランプシェード。彼の作品には用途が存在し、鑑賞のみを目的とした芸術作品ではなかった。それがいつからか動物を作り始め、今度は人間だ。どんどん主張が強く、生々しくなってきている気がする。
 これまで傑は時生の作品を購入することはあっても、詳しい説明を求めたことはあまりなかった。説明されずとも傑は彼の作品に漠然と好感を持っていたし、企業のイメージアップという観点において、廃棄物となる流木を活用しているアーティストを支援するのは都合がよかった。ただ、スランプを乗り越える手伝いをするならば、面倒でも聞かないわけにもいかないだろう。