大学卒業後、TEAM NACSとは別に、北海道にある僕らの事務所の会長、鈴井(貴之)さんが主宰する劇団にも所属して、働きながらもちょこちょこ顔を出していたんです。
そのうちラジオ番組やバラエティー番組でレポーターをやったり、北海道テレビ(HTB)の番組『水曜どうでしょう』にも出演し始めました。ちょうど大学を卒業して2年くらいだったかな。この番組は鈴井さんと大泉が無茶な旅を繰り広げるバラエティーで、僕はそこに同行するHTBのマスコットキャラ「onちゃん」の着ぐるみ役でした。その頃には、バイトをしなくても生活できるようになりましたね。
『水曜どうでしょう』での人気の高まりとともに、TEAM NACSも全国に名が知られるようになりました。ここ数年は映画やドラマでありがたいことに主役をいただけることもあります。今、46歳ですが、いまだにどこか伸びしろがあるんじゃないかと思っている自分がいるんですよね。「そんなわけねえだろ、このオッサンが」と突っ込みつつも、心のどこかにもう一人の自分がいて、もうちょっといけるんじゃないか、と囁いているんです。
20代の頃は、舞台はやっていたけどドラマの仕事はなかった。でも、もうちょっと頑張ってみよう。30代は役には恵まれたけど、実力が追いついていかなかった。でも、もうちょっと頑張ってみよう。40代は仕事がたくさん来るようになったけど、もっとやれるんじゃないか――。そう思うたびに、休む暇なくいろんな仕事を経験したい、もうちょっと頑張ろう、って。ずっとそんな感じでやってきたような気がします。
50年前の作品が現代にも通じる理由
7月には初演から52年を迎えた『ボーイズ・イン・ザ・バンド』で、主演のマイケル役に挑戦します。日本では『真夜中のパーティー』として数多く上演されたので、こっちのタイトルのほうがしっくりくるかもしれません。
この作品では、マイケルのアパートでゲイ仲間の誕生日を祝うパーティーが開かれ、9人の男たちが集うなか、徐々にそれぞれの過去や本音が暴露されていくんですね。ゲイの人に限らず、あらゆるマイノリティに対してまだまだ日本は不寛容です。だからこそ50年前の作品が現代にも通じるわけですが。
ただ、明らかに世界が昔と違ってきたのは、今作が昨年、トニー賞の演劇リバイバル作品賞を受賞したことです。それはすごい進化だと思います。そういった欧米の変化に、日本も多少なりとも影響を受けていますよね。
女性への偏見や差別はいまだに変わらない部分もあるなかで、戦後、女性が参政権を得るようになり、男女雇用機会均等法ができ、産休や育児休業も認められてきてる。もっと急速であるべきなんだろうけど、一歩一歩、進化はしています。やがて僕らの子供、そして孫の世代になって、この作品が上演されなくなるとしたら、そんな素敵な社会はありませんよね。