「〈原発不明がん〉と告げられてすぐに緩和ケア病棟への入院を申し込むよう言われ、当時は急な展開に混乱しました」(東さん)

緩和ケアは命を延ばす「治療」

 原発不明がんの治療が難しいとされる理由の一端がよくわかりました。夫は、診断されたときにはすでに転移先の臓器でがんが大きくなってしまっていて、抗がん剤治療しか選択肢がない状態でした。本来希少がんと診断されたら、どのような治療の選択肢が考えられますか。

下山 そもそも基本的ながん治療には、切除など外科的な手法、放射線治療、抗がん剤による化学療法・免疫療法といった方法があります。

ただし希少がんの場合は、そのいずれもが正解でないことも、往々にしてあります。現状考えられる選択肢のなかで、どれがベストな治療かを各分野の専門家が集まって決める必要があるのです。

だからこそ、さまざまながんに対応できるチームの存在が不可欠。当院では24年に「希少がんセンター」を設立しました。現在は、全国の診療施設と連携しながら、患者さんに応じた最適な治療を目指しています。

 考えうる治療の選択肢を試し、それでもがんを治す方法が見つからない場合はどうなるのでしょう。

下山 がんを消し去るのではなく、「延命」を目的とした抗がん剤などの治療に進むのが現実的です。ただ、抗がん剤は必ず効く治療ではありませんし、強い副作用で体力を落としてしまい、かえって毒になってしまう場合は、投与しないという判断になります。

 「完治」は想像以上に難しいのですね。

下山 はい。ですので、私が患者さんやご家族に病状を説明する際には、厳しい現実をお伝えすることもあります。東さんに初めてお会いしたときにも、いきなり緩和ケアの話をしたので、驚かれたのではないでしょうか。

 「原発不明がん」と告げられてすぐに緩和ケア病棟への入院を申し込むよう言われ、当時は急な展開に混乱しました。

下山 患者さんにとっては、「治るために来ているのに、なぜ緩和の話をされるんだ」という気持ちですよね。