そもそも、そのときに緩和ケアという言葉をはじめて聞きました。何を目的としているものなのでしょうか。

下山 勘違いされることが多いのですが、緩和ケアは、けっして治療をあきらめ、ただ死を待つことではありません。痛みを緩和することで安定した体力を維持し、命をより長く延ばすための「治療」なのです。

 緩和ケアについて先生から説明を受けたときに印象的だったのが、「がん患者は、行き場がなくなるのが一番恐ろしい」と言われたこと。行き場というのがそのときはピンときませんでしたが、選択肢ということですね。

別の患者さんのケースで、「抗がん剤治療をやめるので、今の病室からは出ないといけない。緩和ケア病棟への入院を希望するも空きがなく、家族が自宅で介護しながら待機することに」という話も聞いて。先々の方針を決めることが、いかに大事かわかりました。

下山 がん治療は時間との闘いです。だからこそ、最初の段階で、病状と今後の見込みを正確に伝え、準備を始めることが重要なんです。

 わが家の場合、夫は「抗がん剤が使えなくなったら自宅に帰りたい」という意思がはっきりしていましたし、そのために主治医や看護師、ケアマネジャー、訪問診療・訪問看護にかかわる皆さんも力を尽くしてくださいました。

下山 短い時間で一気に自宅での緩和ケアの体制を整えましたよね。ご夫婦の絆があったから、できたことだと思います。ご家庭によっては事前にリフォームが必要なケースもありますし、各種手続きにも時間がかかります。

自宅に帰られることを希望するなら、できるだけ早く動き出すべき。ただし自宅での緩和ケアはご家族の精神的・体力的負担が大きくなります。

後編につづく

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困ったときの相談窓口

●駒込病院 希少がんセンター
https://www.tmhp.jp/komagome/section/center/kisho_gan_center.html

●全国の希少がんホットライン
希少がんまたは希少がんの疑いのある患者さんやご家族・医療者が、希少がんに関して相談できる電話相談窓口
https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/hotline/index.html

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