駒込病院の下山達先生(左)と書評家の東えりかさん(右)(撮影:岸隆子〈Elenish〉)
〈発売中の『婦人公論』3月号から記事を先出し!〉
2023年3月に夫を希少がんの一種である原発不明がんで亡くした書評家の東えりかさん。夫・保雄さんが入院していた駒込病院の下山達先生と、まだあまり知られていない希少がんという病と、その治療の抱える課題について語り合います(構成:野本由起 撮影:岸隆子〈Elenish〉)

前編よりつづく

医師と患者・家族の関係性が重要

 私の場合は、自分自身が健康で、多少はお金の自由がきいて、介護ベッドを置く場所を確保できて……と、条件がそろっていたからできたことでした。誰にでも勧められることではないと思います。

下山 当時の保雄さんの体調を考えると、病院から自宅へ移動するのもリスクが大きかった。退院時に、車の中で亡くなることもありえました。その可能性をお伝えしておかないと、「病院にいたらもっと生きられたのに」と後悔が残りかねません。

 リスクはわかったうえで、それでも帰してあげたくて。病院では食べることを禁止されていた夫も、自宅では大好きな蕎麦屋の出汁や、洋食屋のスープを口にすることができました。

下山 保雄さんのケースのように、緩和ケアでは、医学的には不正解であっても、患者さんの幸せにつながるならば、容認する場合があります。食べたいものを食べていただくのもその一環。

ただ、医師と患者・家族の間に信頼関係がなければ、ゴーサインは出せません。事情を知らない親族が「なんてことをしてくれるんだ」と病院や家族を責めれば、私たちも守りに入らざるをえない。そうなると、患者の自由度も下がってしまいます。医師と患者・家族の関係性が重要なんです。