「患者さんの声を聞き、患者さんに加わっていただかないと医療はよくならないという課題も感じています」(下山先生)

 夫は転院しましたが、前の主治医も尽力してくださいました。駒込病院でも全力を尽くしていただきましたし、自宅での介護もできることはしたつもりです。それでも「もっとできることはなかったか」という後悔や罪悪感は残るものですね。

下山 保雄さんは特に難しい病気でもありましたし、コロナ禍も重なって、東さんも大変つらい思いをされたと思います。

 「ほかのがん患者やその家族に同じつらい思いをさせたくない。自分の経験を伝えなければならない」という思いもあり、下山先生の医療監修を受け、昨年『見えない死神 原発不明がん、百六十日の記録』という本を上梓しました。

希少がんで家族を亡くした読者から、「家族が実際どういったがんだったのか、これを読んでようやく理解できた」といった声も届いて。まだまだ患者にとっては情報が足りていないと実感しています。

下山 東さんの著書を読み、患者さんの立場からは医師がどのように見え、私たちの説明をどのように理解しておられたのかよくわかりました。患者さんの声を聞き、患者さんに加わっていただかないと医療はよくならないという課題も感じています。

 今、緩和ケアや訪問介護の勉強会に参加しているのですが、私以外の参加者は全員《してあげる側》、つまり医療や看護、介護を提供する側。高い職業意識を持つ方ばかりですが、そこに《される側》の患者の意見はありません。そう指摘したところ、皆さん大変驚いていました。