戻るべき?進むべき?その時、吹雪の中に…

寒さで立ち止まり腕時計を見ると、15分を過ぎて30分が経っていた。どこの角を曲がってよいのか分からない。自宅に電話をして母か兄に迎えに来てもらいたくても、公衆電話はない。スマホもない時代だ。母も兄も東京都内の育ちなので二重遭難の危険も考えた。

私はドジを踏んで危機になるたびに、その状況の新聞の大見出しを考える癖があり、「残業が災いし、自宅近くで雪中遭難」という文字が、頭の中に浮かんだ。

行き過ぎたのだろうか?戻るべきか?進むべきか?と決断を迫られる状態だった。

その時、吹雪の中に自転車を押しながら歩いて来る人が現れた。その人の姿は、後光がさしている神のように見えた。私は体力を温存するために、その人が近づいてくるのを待った。