篠井 まぁ、学芸会だからね。僕は子どもの時に杉村春子さんの『欲望~』のテレビ中継を録音して、そのカセットテープをずうっと寝る時に聴いてたからね。それが鳴海四郎さんの訳で、やっぱりちょっと昭和初期の、古めかしい感じがして。
僕が初演した時の『欲望~』は小田島雄志先生の訳でしたけど、僕には鳴海四郎の杉村春子調が結構出てましたね。それから3回目が雄志先生の御子息の恒志先生の訳になって、今回はG2さんの訳になりました。
右近 そのたびに憶えなおすのは大変ですよね。それにしても、最後に精神科病院へ送られるような暗い役を、よく子どもの時にやりたいと思いましたね。変わってる。(笑)
篠井 ええ、母親も気持ち悪がってました。変な子ね、こんな芝居が好きだなんて、と。
右近 なんで好きっていうのがわかったんですか。
篠井 とにかくもう、雷に打たれたような衝撃を受けたんですよ。右近さんが六代目の『鏡獅子』の映像を観て、衝撃を受けたのも同じだと思うけど。でも右近さんのおうちはご理解があるけど、僕のところは芸能とは関係のないうちだから結構大変でしたよ、ここまで来るのが。
<中編につづく>
ヘアメイク:
森下奈央子(篠井さん)
Storm(右近さん)
スタイリング:
三島和也〈tatanca〉(右近さん)
右近さん衣装協力:ジャケット/DAKS(三共生興ファッションサービス)、その他/スタイリスト私物
出典=『婦人公論』2026年3月号
尾上右近
歌舞伎俳優/七代目清元栄寿太夫
1992年生まれ。曾祖父は6代目尾上菊五郎、母方の祖父は俳優の鶴田浩二。7歳で、歌舞伎座「舞鶴雪月花」の松虫で初舞台。12歳の時、新橋演舞場「人情噺文七元結」の長兵衛娘お久他の役他で2代目尾上右近を襲名する。2018年、清元栄寿太夫を襲名。本名「岡村研佑」に由来する自主公演「研の會」を2015年から続けている。自主公演「研の會」を主宰
篠井英介
俳優
1958年石川県生まれ。日本大学藝術学部卒業。84年に花組芝居の旗揚げに参加し、90年に退団。舞台の代表作に『欲望という名の電車』ブランチ役など。2023年、第58回紀伊國屋演劇賞個人賞受賞。舞台、テレビドラマ、映画など幅広く活躍。3月12~22日に東京芸術劇場シアターイースト、4月4・5日に大阪・近鉄アート館にて舞台『欲望という名の電車』に出演