イラスト:本田佳世
長時間のスマホ使用、また日常の家事などで首には負荷がかかりがち。整体師としてこれまで2万5000人以上に施術を行ってきた鄭信義さんが、自分で簡単にできるストレッチを教えてくれました(構成=山田真理 イラスト=本田佳世)

人間の頭の重さはボウリングの球1個分

私は整体師として患者さんと接するなかで、首の不調や、そこからくるさまざまな体調不良を訴える人が増えたことに気付きました。その原因がスマホの使いすぎによる首の筋肉の異常にあると考えた私は、その状態を「スマホ首」と呼び、効果的な治療法や予防法をお伝えしてきました。

〈【セルフチェック】思った以上にさわってる!?あなたのスマホ依存度は?〉 

スマホを使っているとき、私たちは俯いたり、前傾した姿勢になりがちです。人間の頭の重さは体重の約1割といわれ、大人の場合、平均で約5kg。これはボウリングの球1個分もの重さです。さらに首を前に傾けた姿勢は、まっすぐな姿勢でいるときの5倍もの負荷がかかるといわれます。そうして首の筋肉が不自然に前に引っ張られた状態になるのがスマホ首です。

「スマホはあまり使わないから」という人でも、料理や掃除といった家事、子どもや孫、ペットの世話、読書や手芸、ガーデニングなど、日常で俯いている時間は意外と長いもの。また女性は筋肉量が少なく、少しの時間でも首や肩に負担がかかりやすいのです。

スマホ首になると、首の筋肉はつねに緊張状態になります。筋肉が緊張して固まると血流が悪くなるだけでなく、首の神経が圧迫されて自律神経のバランスも乱れます。そのため首や肩のこりなど体の症状だけでなく、不眠やイライラといった精神的な不調も起きてくるのです。また、姿勢が悪くなることで腰痛や膝痛が起きたり、首のシワ、顔のたるみ、お腹がぽっこり出てしまうなど、美容面に与える影響も見逃せません。

さらにスマホ首が慢性化すると、本来湾曲している頸椎がまっすぐになってしまう「ストレートネック」になる危険性も。こうなると治療がさらに難しくなるため、早めの対策が必要です。