「自分だけ苦しい」から一歩外に

「産まぬ人の驕慢きらきらしきメール」とはまさに今のお嬢様のシュチュエーションそのもの。しかし、それは驕慢、と決めつけ、嫌うものでしょうか。その答えが下句にあります。「かつてわれもこの驕慢にゐき」。思い出してくださいませ。お嬢様が独身だった頃のことを。このような状態を想像できたでしょうか。

ふむ、結婚したばかりの友達に、「お子さんはまだ?」と聞いたことがある、と? 結婚するとその質問の残酷さが分かりますものな。結婚、出産した友達を羨ましくも違う人間として、振る舞い方に想像力が足らなかったこともございましょう。独身女性にも、子持ち女性にも、それぞれの煩悩がいっぱい。そのことを無視して自分の苦痛だけを感じていると、断絶は深くなるばかりでございます。大事なのは想像力。ディナーに行きたくて、でも一人では侘しくて、お嬢様のことを思い出してしまったご友人の苦悩も、少し考えてもいいというもの。

大口玲子さまは東京生まれ、東北生活を長く過ごし、3・11とともに幼い子供もいることから宮崎へ移住しました。クリスチャンでもあり、道徳心とそれでも消えない人間の愚かさ、欺瞞を鋭く歌い上げながらも、露悪的にならないのが特徴と言えましょう。なぜなら、その愚かさや欺瞞を見抜く刃は他者を糾弾するためのものではなく、自らをも刺す内省を持ち合わせているからです。