部屋で起きた不思議

さて、そんな演説はともかく、まず昨年引っ越し直後俺の部屋で起きた不思議をお読みください。

それまでベランダに置いてあった数鉢を、すでに説明した通り、俺は部屋の中で育てる決断をしました。アマリリス(これはベランダにもひと鉢)、モンキーツリー、オリヅルラン、枯れかけた夾竹桃(きょうちくとう)、これまた枯れかけたサボテンといったメンツです。

いとうせいこう
いとうせいこう「植物を礼賛し続けることにも、意味はあるのです」(写真提供:マガジンハウス)

すると昨年6月頃、なんと部屋に元気なコガネムシが出現したのです。何かの葉にぶら下がっていました。たまたま義理の祖母が亡くなって間もなくだったので、妻はそれが「おばあちゃん」だと主張しましたが、だからといって飼うわけにもいかない。俺はすぐにそいつをつまんで外へ放しました。

が、翌日起き出して部屋の植物コーナーに行くと、サッシの内側にまたあいつがいるではありませんか! 確実に追い出したし、そのあと窓は閉めてあったのにです。再び妻は「おばあちゃんだ」と言いました。「だからまた中に現れたんだ」と。俺は我が家に非科学を猖獗(しょうけつ)させるわけにもいかず、「うん、まあそうだとしても、おばあちゃんも外がいいだろう」と説得力のない言い訳をし、またもその甲虫を空に放ちました。