園芸は日々進化していく

シイタケ栽培に話を戻すが、過去自分が書斎で原木に水を吹きかけていた頃、当然あたりが湿っぽくなり、明らかにそれが書物によって吸われているのに俺は気づいていた。にもかかわらず毎日収穫出来るシイタケに目がくらんで、対策を練らなかった。

そのうち鉢の半径数十センチの床がうっすら白くなった。やはり胞子であった。妻に勘づかれればシイタケ栽培の権利を奪われかねず、私はティッシュでひそかに掃除をした。だが胞子は俺の労働を嘲笑うかのようにさらに遠くまで散った。俺の書斎はこうして、湿気と胞子の集合場所になってしまい、本にカビが生える寸前まで行った。

そこへ行くと、今の栽培キットは違う。原木を覆う透明ビニール、もしくはプラスチックの容器がついている。「胞子問題」はすでに解決されているのだった。俺は室内園芸家として、そうやって袋をかぶせた原木をさらに室内のビニールハウスに入れ、原木の下に鉢受けを置いてクルクル回しながら霧を吹きかけている。胞子の心配なく収穫は続く。

こうして園芸は日々進化していくのだ。

※本稿は、『日日是植物』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。

【関連記事】
いとうせいこうが語る<植物を礼賛することの意味>「悲惨なニュースが輪をかけて悲惨に放送される毎日で、どれだけ長く良心を明け渡さずにいられるか。そこに園芸は大きな役割を果たすのでは」
園芸家・いとうせいこう流<ワンコインの楽しみ方>「多彩に品種改良されたあの花をオール100円で5種類購入。室内ビニールハウスの最上段に置いて…」
夏に起こりがちな<園芸あるある>とは?いとうせいこう「あまりの暑さで『こいつも水を飲みたいだろう』と調子の悪い鉢に水をやりすぎた結果…」

日日是植物』(著:いとうせいこう/マガジンハウス)

生きとし生けるものが愛おしい!

「ベランダ園芸家」改め「室内園芸家」による、ドラマティック植物生活の記録。